愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
驚きに目を丸くした私は、まじまじと彼を見つめる。


微笑んではいるけれど、その瞳は誠実そうで、冗談を言っている雰囲気ではない。

それなら本気で買い取ろうとしているということで、ここの土地価格を見誤っているのだろうか……?

建物はあちこち傷んでいて、壊さなければ売りに出す際にマイナスになると言われたけれど、近くには繁華街があり、電車の駅が徒歩圏内というこの場所は、都内でも坪単価が高い方だ。


『桐島さんには無理ですよ』と直接的に伝えるのはためらわれ、「結構高いので、無茶しない方が……」と言い淀めば、彼がニッと笑った。

それは今まで見たことのない、挑戦的な笑みである。


戸惑う私の前で桐島さんは立ち上がると、和箪笥の前にいき、引き出しからなにかを取り出して、元の位置に腰を下ろした。

座卓に置かれたのは預金通帳と、未使用の領収書の束のようなもの。

けれども、よく見れば、それは領収書ではなかった。

銀行名が書かれた上に、【小切手】と太字で印字されていて、ボールペンを右手に持った彼が真顔で私に言う。


「ここなら、四千万円くらいでしょうか。そちらの言い値でいいですよ。五千万でも一億でも構いません」

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