愛育同居～エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい～

そう言われても、私はポカンとするばかりで、驚いていいのかさえわからない。

それは、この土地の価格が四千万円もしないという理由ではない。

紫陽花荘に部屋を借りに来る人は、金銭的に余裕がない人がほとんどなので、桐島さんがお金持ちのはずはないと思い込んでいたからだ。


やっぱり冗談を言っているのだろうか……と目を瞬かせる私に、桐島さんは預金通帳を開いて「これが支払えるという証拠だよ」と見せてくれた。

そこには数字が九つ連なった預金額が印字されていて、私の目玉が飛び出しそうになる。

彼は、この土地くらい、今すぐ小切手一枚で買ってしまえるほどにお金持ちであった。

でも、どうして……。


「桐島さんは何者ですか……？」と恐る恐る尋ねれば、彼がプッと吹き出し、笑いながら答えてくれる。


「私は私です。ベルギー人の母と日本人の父を持つ、三十四歳の普通の男だ。今まで有紀ちゃんが私に対して抱いていたイメージは、きっとその通りだと思うよ。それに、紫陽花荘を買い取れる資産があるという認識を加えるだけでいい」