愛育同居～エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい～
彼が両親について口にしたことで、ハッと思い出したことがあった。

それは、世界的に有名な音楽家であるという話だ。

彼の両親がお金持ちなのだと理解した後は、そのお金を息子が勝手に使っていいのかと心配になる。


「あの、ご両親に相談してからの方が……」と口にすれば、桐島さんが微かに眉間に皺を寄せ、不満げな声で反論する。


「これは私が稼いだものです。両親から小遣いをもらっていたのは、学生の頃まで。使い道を相談する必要はない」


勘違いの末の失礼発言を、「ごめんなさい！」と慌てて謝った後は、私は再び疑問の中に戻される。


彼は一体、どんな仕事をしているのか……。


前に『ベルギーに本社を置く企業の子会社』だと教えてくれたけど、仕事内容については『ごくごく普通のもの』とお茶を濁された感じであった。

あの時は、それだけの説明でも、話してくれたことに満足していたが、預金額を見た後ではもっと具体的に知りたくなってしまう。

しかし、それを彼に問いかける前に、「有紀ちゃん」と、真面目で誠実そうな声で呼びかけられた。

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