愛育同居～エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい～

それを自覚していながらも、祖母との思い出の詰まった大切な建物を壊さなくて済むという誘惑には勝てず、震える涙声で「よろしくお願いします」と甘えてしまった。


深々と下げた私の頭に、温かくて大きな彼の手がのり、優しく撫でてくれる。


「こちらこそ。有紀ちゃん、末長くよろしく」


“末長く”と言われたのは二度目で、前回よりもその言葉に強い頼りがいを感じていた。


「桐島さん、ありがとうございます……」


頭を上げれば、嬉しそうに頷く彼の顔が涙でにじむ。

面立ちがまったく異なるのに、なぜかその顔が、在りし日の祖母の笑顔と重なって見えた。


ああ、おばあちゃんも、ここを桐島さんに買い取ってもらえることを喜んでいる……。

そう感じて、私の胸には穏やかな安堵と、彼への深い感謝が広がっていた。