愛育同居～エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい～

【株式会社モルディ・ジャパン】という企業名に、私は目を瞬かせた。

まさか、ここを受けてみたらと言うのだろうか……。


畳に膝立ちしている私が、隣に立つ長身の桐島さんを見上げれば、穏やかな口調で予想通りの提案をされる。


「この会社にエントリーしてみてはどうかな。有紀ちゃんはモルディチョコレートが好きだよね？」

「はい。チョコレートは大好きですけど……」


モルディは、桐島さんがたまに差し入れてくれる高級チョコレートを、製造販売している会社だ。

本社はヨーロッパにあり、世界各国に子会社を持つ大企業である。

高卒で、これといった資格もまともな職歴もない私を、大企業が採用するはずがない。

これまで面接を受けた四社は、規模が小さく給料もかなり安い方だったけど、それでも落とされてしまったのに。


私の就職活動まで手伝おうとしてくれる親切な桐島さんに、「お気持ちは嬉しいんですけど……」と前置きしてから、眉尻を下げてその勧めを断る。


「こんなに大きな会社は、私を雇ってくれません。きっと履歴書を送っても、面接も受けさせてもらえない気がします」