つなげば星座になるように
王子とは同じ大学2年生で、ある講義で一緒にグループワークをしている。

おそらく、学内メールで連絡のあった、変更分の資料を持ってきてくれたに違いない。

面倒見のいい人だからなぁ。

私が早く取りに行かなかったから、機嫌が悪かったのかな?

でも、夕方まででいいはずなんだけど…


「どうしたんだろう…、ね?」


一緒に食べていた、サークル仲間に謝りつつ、問いかけると、

あからさまに男子2人が怯えていた。


「いや…、ごめんね。オレが通りすがりに“パン1個くれ~”なんて、余計なマネしたから…」

「俺も“どうせならみんなでランチしよう”なんて軽率だったよ、ハハ…」

「まあ、野上さんは気にすることない。王子が勝手にヤキモチ焼いてるだけだ」


最後に、冷静に言い切ったのは、この“歌葉部(うたはぶ)”の部長である、3年生の笹見綾菜(以下ささみん)先輩だ。

“歌葉(うたは)”は、ささみん先輩が考えた “歌”と“言葉”を混ぜた造語。

ささみん先輩曰く、サークルの目的・目標は、

“言葉が音として存在する時間中の情報量を計測し、コミュニケーションの新たな可能性を示す”

ことらしい。

…が、凡人には全くよくわからない。

その結果、この4人(女子2人と男子2人)しか部員がいないので、正式にはサークルですらない。

この状況を打破すべく、7月の時期外れではあるものの、新入部員獲得のため、KUIS8のThe Stageでイベントをさせてもらえることになった。

ささみん先輩の交渉力に感謝です。

それより、さっき言ってた、


「ヤキモチって…、なんのこと?」

「……」


その質問に、3人はやや憐みの表情を浮かべると、私の顔を見つめ、深く大きなため息をついた。

そして、来たるイベントのための練習成果を、否応なく見せつける。


「「「かわいそうな、王子~!!」」」


アルト、テナー、バスの音程での、見事にハモりだった。
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