つなげば星座になるように
『“好きだ”って言ったんだろ?日本語で。“love”と“like”を勘違いしてるとかじゃないのか?』


気を使っているのか、いつもはすぐに女の子と出かける友達が、珍しく僕にカフェを勧めながら聞いてくる。


『……、それはない』

『なんて言って告白したんだよ』


結衣は日本人なので、彼女の母国の言葉で伝えたかった。

だから、いろいろ調べた。

日本語の美しい表現で、愛を伝えるにはどうしたらいいのか。


『“月がきれいですね”』

『what?』

『それの、どこが愛の告白なんだ?』

「夏目漱石だな」


ふいに降ってきた日本語に、思わず頭を上げると、

歌葉部の部長、ささみん(←そう呼ばないとキレる)が見下ろしている。


「いいか?王子、今時の女子に、それを愛の告白だとわかる者は、ほぼいない」


――…え?

今、彼女はなんて言ったんだ?


「…本当に?」

「なんで私が王子と冗談を言い合わなくてはならないんだ?」

「…No kidding…、マジか」

「だから、さっきから、そう言っているだろう」


僕が結衣を好きなのだと、伝わっていなかった…?

無視していたわけでも、ないということか。

そうだ、よく考えてみれば、

そもそも結衣はそんなことをするような人じゃない。


――よかった…


ホッとしたのもつかの間、

今度は、昼間の自分の悪態を思い出して、絶望する。


「I really messed up…」


――やってしまった…
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