独占欲高めな社長に捕獲されました

「単刀直入に言うと、経営会社が破綻しそうでね。もったいないからとうちが買い取ったんだけど、少し改装をしようということで」

 たしかに、資料で見返すと、「クラシカル」という言葉では拭いきれないくらい、劣化を感じる部分がある。

 「クラシカル」はいいけれど、「古臭い」はいけない。社長ならそう言いそうだ。

「中には少なからず美術品も残されている。それも丸ごと買い取ったんだけど、扱い方がわからなくてね。絵とかって湿度や温度が難しいんだろ?」

「いい状態のまま保管をするにはってことですね」

「そうそう。例えば風呂場や脱衣所に置いちゃダメだろ」

 当たり前だ。カビが生えるわ。そんなことは課長も承知しているだろうから、わざわざ突っ込むのはやめた。

「基本は今のクラシカルさを保ちつつ、あまりに古めかしく見えるところは改装。美術品は横川さんのセンスで移動してもらっていいから。外した方がいいものは外して、いい感じに会社の倉庫に送ってほしい」

 たしかに、絵画を扱ったことのない社員じゃ、古い絵画の移動や保管辺りで余分な時間を食ってしまうだろう。

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