独占欲高めな社長に捕獲されました
「ただこの大きなホテルを横川さんひとりに任せるのは大変だろうから、今回は先輩社員と組ませることにする。色々教えてもらって」
「はい!」
美術品の扱いだけならともかく、いきなりだだっ広いホテルの全体を任せられるとなると、さすがに荷が重い。
昨日の今日で、こんなにトントン拍子に話が進むなんて。意外と私、すごいのかも。
新しい仕事をもらって舞い上がる私に、課長は笑顔で言った。
「じゃあ、あとは松倉君に──」
「ほ?」
今なんて……。立ち上がった課長は、言いかけて一旦ミーティングルームから消えた。ドアのところで誰か手招きしていると思うと、呼ばれて現れたのは……。
「松倉君、この前言っていたクラシカルホテルの件。横川さんと一緒にやってもらうから、サポートよろしくね」
狭いミーティングルームに押し込まれるようにして入ってきたのは松倉先輩だった。とても迷惑そうな顔をしている。
いや、迷惑なのこっちですから。こんな根性腐ったやつと初の大仕事とか、マジ勘弁してください。
私と先輩の間に漂う殺伐とした雰囲気をものともせず、課長が少し寂しくなってきた頭髪をなでながら言う。