独占欲高めな社長に捕獲されました
「お互い色々とあるでしょうけど、おとなだからね。同じ職場の仲間だからね。仲良くやってよ」
「はあ……」
別に仲良くしたかねーよ。
とは言えず、舌打ちしたい気持ちを押し込める。
「そうと決まれば、早いうちにいちど現場を見に行ってもらわないとな」
「それはそうですね」
諦めたように松倉先輩が資料を見ながらうなずく。
ええー、気が重い。このチーズ男と静岡まで一緒に行かなきゃいかんのか。せっかくの心躍るような仕事を与えられたというのに、ツイてない……。
「あとは二人で打ち合わせして決めていって。じゃあ」
ミーティングルームから容赦なく出ていってしまう課長。ああ、いかないで……。
残された私と先輩は視線を合わせず、しばし黙りこくっていた。気まずい沈黙。それを破ったのは、先輩だった。
「横川さん、意外としたたかなんだ」
ちゃんと聞こえていたけど、返事をしなかった。先輩は独り言のように続ける。
「社長の次は課長を味方にしたの?」
ほら、嫌味じゃん。
「運がいいんですかね。そっちこそ、意外と根性悪なんですね。あんな些末なことで後輩をいじめるような器のちっちゃい人だとは思っていませんでした」