独占欲高めな社長に捕獲されました
一緒にホテルに行こうと誘われ、どうしようか迷っていたら社長に拉致された。それだけだ。私には何の落ち度もない。
いちど、真面目にケンカをする必要があるのかもしれない。覚悟を決めた私は、座ったままの姿勢で立っている先輩をにらむ。
「もうそれは言うなよ。こっちが悪かった」
意外なほどあっさりと、先輩は捨て台詞を吐くように謝罪の言葉を口にした。頭は下げなかった。
自分がしたことがいかにくだらないか気づいたのか、社長を敵に回してはいけないと思ったのか。どっちにしろ、謝ってきたのだからこっちも引きずってはいけない。私はただ、こくりと小さくうなずいた。
「じゃあ改めて仕事の話をしようか。とにかく現地を見なければ始まらない。ホテル運営スタッフがいいと言えばすぐにでも行くか」
「問い合わせます」
「ついでに部屋が空いているか聞いておいて。一日じゃ終わらないだろうから」
「えっ」
つまり、一拍して二日がかりで下見をしようということか。ついでにホテル運営スタッフとも話をしておきたいし、たしかに一日じゃ足りなさそう。