独占欲高めな社長に捕獲されました
「わかりました。私は実家が静岡なので、実家に帰ります」
「そう。いいんじゃない」
松倉先輩は社長に拉致された私を、彼の所有物とでも思っているのだろうか。以前のようにセクハラまがいの目で見るようなことはなくなっていた。
淡々と段取りを決め、私たちはそれぞれのデスクに戻った。パソコンを開くと、今までの取引先からのメールが何件か来ていた。社内メールは、ない。
静岡のホテルに問い合わせの電話をかけながら、緑化された屋上に想いを馳せた。社長は今日も、こっそりあそこで息抜きしているかな。そんな暇はないかな。
私に突然キスをした彼は、他の男と一緒に出張に行くと知ったらどんな顔をするだろう。「お前が誰とどこへ行こうと関係ない」と冷たい反応を返すだろうか。それとも。
コール二回で、電話は繋がった。受話器の向こうから礼儀正しい声が聞こえてくる。
私は無理やり、屋上でコーヒーを飲む社長の姿を頭の中から追い出した。