独占欲高めな社長に捕獲されました

 翌日。

 つい昨日まで火花を散らしていた私と松倉先輩がいきなりタッグを組んで仕事をすることになり、周囲も驚いていた。結局松倉先輩に振り回された人たちは、冷たい目で彼を見ていた。

「こうして人は信頼を失っていくのです……」

「なにぼそぼそ言っているの」

「いいえ、何も」

 松倉先輩は人格の良し悪しはともかく、仕事はできる人なので、色々と教わりながら、計画を立てていく。

 昼休みになり、自分でにぎったおにぎりを持って屋上へ向かった。

 緑化された屋上は、昼休憩を満喫する社員でにぎわっていた。きょろきょろと見回すと、端っこのベンチが空いていた。

 女性社員はみんな日陰を好む。紫外線が気になるから。もう秋だというのに、直射日光は露出した首元の肌を容赦なく熱くする。

 すとんとそこに座り、ふうと息をつく。水筒のお茶を一口飲んで、ふたをしめた。

 スマホを片手に、雑にナプキンをほどき、ラップに包まれたおにぎりを出す。あーんと一口めを齧ろうとしたとき、すっとそれが宙に浮いた。

 大きく口を開けたまま見上げると、そこにはいつの間にか西明寺社長が立っていた。私のおにぎりを奪い、にやりと笑っている。

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