独占欲高めな社長に捕獲されました
この前の夜のことを思い出し、ぼっと火が点いたように体が熱くなる。私、この腕に抱きしめられた。そんでもって、キスまでされた……。
「しゃ、しゃしゃしゃ、社長」
周りがちらちらとこちらを盗み見る視線に気づく。女子社員たちは社長を背後から思い切り指さし、頬を紅潮させていた。そう、彼は女子社員の憧れの的なのだ。知らなかったけど、今気づいた。
「これをよこせ」
社長は前触れもなく、昔話に出てくる悪い鬼のように言った。まるで、あの夜のことなんて何も覚えていないように。
「もちろんタダでとは言わない。物々交換だ」
目の前に茶色の紙袋が差し出される。中を覗き込むと、色とりどりの野菜やゆで卵、チキンが入ったサラダのプラスチックカップの上に、バターの香りがするクロワッサンが乗っていた。
もう一度袋を確認すると、それはデパ地下の人気ベーカリーのものだと悟る。数か月前に買い物に出た時、パンと一緒にサラダを買おうと思ったけど、どれもひとパック千円越えしていたので諦めた思い出がよみがえる。
「昼食を秘書に頼んだら、こんなものを選んできてな」
「素敵じゃないですか」
「ウサギでもないのに、草で腹が膨れるか」