独占欲高めな社長に捕獲されました
社長はダメ押しのように、広い飲み口のスムージーまで押し付けてくる。それはたしかに、藻で覆われた季節外れの学校のプールを思わせる色をしていた。パッケージのおしゃれな英語でもぬぐい切れない、まずそうな感じ。
「きっと社長の体を気遣ってくれているんですよ」
「それは俺が自分自身で管理する。とにかく米が食いたいんだ」
「はあ……こんなものでいいんですか?」
私は鬼に、竹の皮で包まれた……じゃなかった。ラップで包んだおにぎりと、今日は別々にしてきたのりを差し出す。
「歯海苔に気を付けて」
一言付け加えて渡すと、社長はニッと笑った。そんなにおにぎりが食べたかったのか……。
気が付くと、周りの社員が相変わらずこちらを見ている。まさか社長、このまま隣に座るつもりじゃあ……。
どうしよう。普通の顔でいられる自信がない。今だってじゅうぶん、赤くなってしまっているだろう。対応する声が微妙に震えているのが自分でもわかる。
「ああ。じゃあな」
拍子抜けするほどあっさりと背を向けて歩き出す社長。ほっと息をつくと、くるりと彼が振り返る。
「そういえばお前、どうしてここにいる?」