独占欲高めな社長に捕獲されました
目線を遠くにして投げやり気味に言うと、社長は嬉しそうにほくそ笑み、こちらに近づく。そして、他の人には聞こえないくらいの小さな声で囁いた。
「そうがっかりするな。本当はお前の顔を見たかったんだよ」
──ぼんっ。
そんな音が聞こえそうなくらい、一瞬で顔が上気した。
「あ、う、お」
「じゃあな」
人間の言葉を失った私の頭をぐしゃぐしゃとなで、社長は去っていった。
慌てて髪を直していると、周囲の視線が突き刺さる。
私は何もなかったようなすまし顔を作り、勝手に社長とトレードされたランチを急いで食べた。せっかくのデパ地下サラダだったのに、味はほとんどわからなかった。