独占欲高めな社長に捕獲されました
木曜。
松倉先輩と新幹線に乗った私は、すっかり爆睡してしまった。昨夜遅くまで、ロビーに飾る絵のことを考えていたから。
あのロビーを思い描くと、どうしても西明寺社長の姿が浮かんできてしまい、集中が途切れてしまう。期限まであと二週間ほどなのに、なかなかはかどらない。
「寝顔はしっかり写真に納めたからね」
「あーはいはい。好きにしてください」
静岡駅で降車してタクシーをつかまえたあと、松倉先輩が、私の大口開けた寝顔を携帯で撮影した画像を見せてくる。弱みでも握ったつもりかしら。別にそんなもの、SNSに流されても構わない。
それより、これから取り掛かる仕事に集中しなきゃ。そして、期限内に課題の絵画を決定する。候補はいくつか上がってきた。もう少し探してから絞り込む予定。
タクシーの中では、ちゃんとタオルを顔にかけて爆睡した。クラシカルホテルに着いたときには、しっかり頭が覚醒していた。やっぱり睡眠大事。
「おお~」
「いい建物だな。古いけど」
私と先輩はタクシーから降りてホテルを見上げる。少し歩き、外観の全体を写真に撮った。
「さて、行きますか」
「はい」
一瞬で仕事モードになる私たちは、意外に気が合うのかもしれない。そう思いつつ、ホテルの入口をくぐった。