独占欲高めな社長に捕獲されました

 木曜。

 松倉先輩と新幹線に乗った私は、すっかり爆睡してしまった。昨夜遅くまで、ロビーに飾る絵のことを考えていたから。

 あのロビーを思い描くと、どうしても西明寺社長の姿が浮かんできてしまい、集中が途切れてしまう。期限まであと二週間ほどなのに、なかなかはかどらない。

「寝顔はしっかり写真に納めたからね」

「あーはいはい。好きにしてください」

 静岡駅で降車してタクシーをつかまえたあと、松倉先輩が、私の大口開けた寝顔を携帯で撮影した画像を見せてくる。弱みでも握ったつもりかしら。別にそんなもの、SNSに流されても構わない。

 それより、これから取り掛かる仕事に集中しなきゃ。そして、期限内に課題の絵画を決定する。候補はいくつか上がってきた。もう少し探してから絞り込む予定。

 タクシーの中では、ちゃんとタオルを顔にかけて爆睡した。クラシカルホテルに着いたときには、しっかり頭が覚醒していた。やっぱり睡眠大事。

「おお~」

「いい建物だな。古いけど」

 私と先輩はタクシーから降りてホテルを見上げる。少し歩き、外観の全体を写真に撮った。

「さて、行きますか」

「はい」

 一瞬で仕事モードになる私たちは、意外に気が合うのかもしれない。そう思いつつ、ホテルの入口をくぐった。
< 118 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop