独占欲高めな社長に捕獲されました
夕方五時、再び入口に戻った私と松倉先輩は、翌日の予定を確認して別れた。
「はあ~……」
タクシーに乗って、盛大にため息をつく。っていうか、我ながら最近ため息多いな。
ホテルの中は、思っていたより老朽化が進んでいた。ヨーロピアンクラシカルな内装は、一昔前の豪華客船が氷山にぶつかって沈む映画を思い出させた。
らせん階段に、シャンデリア。全体的に丸みを帯び、草花のモチーフが多く使われるアールヌーボー調の内装は、どこを見ても可愛かった。しかし。
階段の手すりや窓枠はところどころ塗装が剥げているし、カーテンはよく見たら日に焼けて色あせている部分がある。客室も同様に、洗面台やトイレが経年劣化で色が変わってきている。一歩間違えば「ただの古臭いホテル」と認識されてしまいそうだ。
全てを真新しく綺麗なものと変えてしまっては、このホテルの意味がなくなってしまう。いいところは残しつつ、微妙なところを取り替えてより良くするのが私の仕事。