独占欲高めな社長に捕獲されました

 飾られている美術品の中には、残念ながら日に焼けて退色してしまったものもあった。たっぷり日差しが入るカフェテラスのガラス棚に置かれていたアンティークのティーカップなど。残念ながら、倉庫行きになってしまいそうだ。

 せっかくの美術品も、ちゃんと保管しなければその輝きを失ってしまう。建築物もそうだ。それが大衆向けのホテルであっても、良い建物はその趣を残したまま、受け継いでいきたい。

「やること多すぎでしょ」

 あれもこれも、どこから手をつけたらいいのか、さすがの松倉先輩も頭を抱えていた。

 駅から電車を乗り継いで実家に着いた頃には、足がパンパンになっていた。

「ただいま~。おばあちゃ~ん」

 ギャラリーの入口から入った私は、お客さんがいないことを確認してから大きな声で挨拶をした。

 キャリーケースを引きずり、カフェスペースの椅子に座る。おばあちゃんはいつもカウンターの中でお客さんを待っている。けれど今日は姿が見えない。

 そういえば、もう閉店時間を過ぎている。振り返ると、すっかり暗くなった外の景色が見えた。

「……どうしたのかな」

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