独占欲高めな社長に捕獲されました
「どうしたの。具合でも悪いの?」
駆け寄って背中を触ると、おばあちゃんは困ったように微笑んだ。
「そうじゃないのよ。今日は珍しくたくさんお客さんが来てね。疲れちゃった」
「本当?」
土日でも、疲れて動けなくなるほどのお客さんが来たことは、このギャラリー始まって以来ない。疑いの目を向けると、おばあちゃんはいじけたようにむくれた。
「あら、ひどいわね。今日はおじいさんのファンの……なんて言ったかしら。おふかい?」
「オフ会? SNSか何かで知りあったファンの人たちかな」
「そうそう。今日初めて会う人たちが六人集まって、お茶会しながらおじいさんの話をしたのよ。私も混ぜてもらったの。楽しかった。ポストカードをたくさん買ってくれたわ。絵も売れたの」
どうやら、嘘は言っていないようだ。咄嗟にそこまでの作り話をできるほど、おばあちゃんは口が上手じゃない。
「そう。よかった」
「晩御飯、今から作るからね」
「ううん、いいよ。出前でも取ろう。久しぶりに松野屋さんのおそばとかどう? おじいちゃん、好きだったよね」
「うん、好きだった。おだしがおいしいものね。じゃあ今日は出前にしちゃおう」