独占欲高めな社長に捕獲されました
おばあちゃんは「よっこらしょ」と言って立ち上がった。カウンターの外に出て、固定電話があるところまで歩く姿は、それほど危なっかしさを感じなくてほっとする。
「もしもし? 出前をお願いします」
電話をかけるおばあちゃんの声は、少し枯れているようだった。お客さんたちとお話が盛り上がったのかな。
受話器を置いたおばあちゃんは、ダイニングテーブルの前の椅子に腰かけた。
「今日はよかった……楽しい一日だったわ……」
眠そうな目をこする手が、一瞬枯れ木のように見えてどきりとした。
「おじいさんの作品を愛してくれている人がたしかにいるんだってわかってね。このギャラリーをやっていて良かったって思った」
「そっかあ。じゃあその人たちのためにも、このギャラリーを残さなきゃね」
お茶を淹れようと、やかんに水を入れて火にかける。そのせいか、おばあちゃんからの返事が聞こえなかった。
「……ね」
「んー? ごめん、もう一回言っておばあちゃん」
「そのことだけどね、美羽」