独占欲高めな社長に捕獲されました
6 それはとてもシンプルな事実だった
「やる気がないなら東京に帰りな。あとは俺がやるから」
隣に座った松倉先輩に言われて、はっと目を開ける。目の前の書類が乗った机を見て、ここがクラシカルホテルの会議室だということを思い出した。
正面に座ったホテルのスタッフが苦々しい顔でこちらを見ていた。
「す、すみません」
昨夜はせっかく実家に泊まったのに、なかなか眠れなかった。おばあちゃんのこととか、ギャラリーの行く末とか、色々考えていたら目が冴えてしまったのだ。
だからって、打ち合わせ中に居眠りするなんて最悪。嫌味を言われたって仕方ない。
ひたすら謝って、最後まで打ち合わせに参加した。どのように改装していきたいか、お互いの意見を交換するためだ。
今まで別の会社の元で働いてきたスタッフたちは、このホテルを大幅に改装することには気が進まず、できるだけ現状維持で、設備的に古いところ──キッチンや浴場など──を直してほしいらしい。
一方私と松倉先輩は、設備だけでなく見た目もよくするという義務を追っているため、相手に納得してもらうプレゼンをしていかなければならない。