独占欲高めな社長に捕獲されました

「そうよねえ。言ってなかったもの。お隣のホテル、だいぶ経営が厳しくて、土地ごと西明寺さんに明け渡すんですって。それでね、この土地も売らないかって。社員さんが何度も足を運んでくださったんだけど、私はお断りしていたのよ」

そんな話、おばあちゃんひとこともしなかったのに。文句が口をついて出てきそうだったけど、ひとまず飲み下す。

「そちらはお孫さんですか?」

「ええ」

いきなり自分の方に話を振られ、ぎくりとする。おばあちゃんは動揺した様子もなく微笑む。

「昨日お会いしませんでしたか。昨日と印象が違うから、一瞬わからなったけど」

どうやら、猿の絵の話をしたことを覚えていたらしい。

「さ、さあ」

しらを切った私は、顔を隠すようにうつむいた。

「人違いかな。綺麗な人だから、見間違えるはずはないと思ったんですが」

社長は薄らと微笑む。かっと頬が熱くなった。

白々しい。私たちに気に入られようと、嘘を言っているに決まっている。だって、“綺麗”だなんて、今まで言われたことなかったもの。

そう言ってくれたのは、二年前に亡くなったおじいちゃんだけだった。


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