独占欲高めな社長に捕獲されました
「社長さん、せっかくですから、お茶をいかが?」
「お、おばあちゃん」
「東京からわざわざ足を運んでくださったのですもの」
悠長な。おじいちゃんの生きた証がつまったこのギャラリーを手放す気なんてないくせに。
早く追い返した方がいい。相手に期待を持たせて、逆切れさせたら怖い。
「ありがとうございます。いただきます」
「コーヒーと紅茶と、どちらになさいます?」
「では、コーヒーを」
「かしこまりました」
カウンターの中に入るおばあちゃんの後を追いかける。おばあちゃんはお皿にクッキーを盛っていた。
「ねえ、どうして追い返さないの。あのひと、私の勤め先の社長なのよ」
「知っているわよ」
「そもそも、こんな話になっているなんて、私知らなかった。どうして話してくれなかったの。私、絶対に反対だから」
「“どうして”が多い子ねぇ。おじいさんの絵をあんなに真剣に見てくださったんだもの。粗末にしちゃバチが当たるわ」
「それだって、作戦かもしれないじゃない。こちらに好感を抱かせるための……もう!」
聞こえているのかいないのか、おばあちゃんはコーヒーをカップに注ぎ、トレーに乗せた。