独占欲高めな社長に捕獲されました
「でも、何を描けば……」
昔は白紙に向かうだけで、次から次へと描きたいものが浮かんできていた。でも今は、はっきり言って何も浮かばない。
「ここにこんなにいいモデルがいるじゃないか」
部屋の隅に置いてあった椅子を正面に持ってきて、背もたれに腕を預けるようにして座る社長。
「社長をモデルに?」
たしかに、絵に描きやすそうな整った顔をしているけど。学生時代にミケランジェロの石膏像をデッサンした時のことを思い出す。
「なんなら、脱ごうか」
「いいいいいええ、結構です! そのままで!」
自らの服に手をかける社長を必死で止めた。
学生時代は男性モデルの裸を見てもなんとも思わなかったけど、社長と二人きりなのに脱がれたらさすがに照れる。こっちが恥ずかしくて集中できない。
社長はにっと笑って、椅子に座りなおした。背もたれの上で組んだ腕に顎を預けて小首を傾げる姿は、まるで男性アイドル雑誌のグラビアのよう。
息を整え、ちょうどよく削られた鉛筆を持ち、まっすぐ前に出す。片目を閉じ、社長の方を見た。