独占欲高めな社長に捕獲されました
「本題に入りましょうか。失礼ですが、今日は相談に来たのではないのです。横川さんに選択をしていただこうと」
選択?
首を傾げると、社長は足元に置いてあったビジネスバッグから、タブレット端末を取り出す。
軽やかな指先で操作されたそれに、一枚の書類が表示された。私はそれを覗き込む。元の書類を撮影したものだろう。端の影が全体を暗く見せていた。
「借用書です」
「借用書……」
それは、お金を借りるときに誰かが書いた借用書のようだった。
社長の指で拡大された借りた人の欄を見ると、全然知らない人の名前が書きこまれていた。
「この人物は、ある個人から五千万円の借金をしています」
「はあ」
「しかし、夜逃げしてしまい、行方がわからなくなってしまいました。金を貸した人物は大層困っていたので、縁があったわが社が肩代わりをすることにしました。でもこのままでは私たちが損害を受けるだけ。そこで、この人物を探しています」
長い指が下から上へと動く。すると、保証人の欄が現れた。
「……は!?」
そこにあった名前は【横川裕一郎】。何年も会っていない、自分の父親の名前だった。