独占欲高めな社長に捕獲されました
お父さんの絵の価値がどんどん上がっている今、もしお父さんが帰ってきて真面目に絵を描いて売ったら、借金が返せてしまうくらいになると思ったのか。
とにかく、うちの実家の土地を穏便に手に入れるために、様々な手を打っておいた、ということだろう。
「なんだよ……」
舞い上がっていた自分がバカみたいだ。この気持ちを恋だと認めた途端、地に突き落とされるなんて。
悲しみと怒りが入り混じった涙の膜が視界を歪ませる。私はそのへんにあったゴミ箱に、トートバッグごとお弁当を投げ捨てた。
ふざけるんじゃないわよ。こんなもの、最初からいらなかったんだ。秘書に見せて一緒にバカにしてたんだ。
乱暴に下の階のボタンを押す。目頭から溢れてきた雫は指で拭った。
まだ午後の仕事がある。今泣くわけにはいかない。
他のことは考えるな。またバカにされる。仕事だけは、ちゃんとやらなきゃ。泣くのはいつでもできる。
昴さんのことを考えないように、昼休憩を返上してクラシカルホテルの改装のことだけを考えた。
なんとかミスをせず今日の分の仕事を終えた。本来の終業時刻を少し過ぎていて、オフィスにはもうほとんど人がいない。バッグを掴んで立ち上がったとき、松倉先輩に軽く肩を叩かれた。