独占欲高めな社長に捕獲されました
父は悪い人ではない。むしろ少しお人よしなところがあったので、うっかり保証人になってしまうこともあると思う。
家にいるときはうんと優しくしてくれた。今はたまに絵葉書が届く程度。個人的な恨みはないし、嫌いじゃない。むしろ、ずっと日本にいてくれればいいと思っている。
自分が書きたいテーマのためなら、戦地にも平気で行ったりしてしまうので心配は絶えない。
けど今、初めて恨むよお父さん! どうしてこんな多額の借金の保証人になるのよ! 返す能力もないくせにー!!
「もちろん、お父さまに可能であれば、すぐにお願いしてください。もっとも、こちらでは彼の居所をつかめませんでしたが。果たして生きているのかも、微妙ですね」
淡々と言い、残りのコーヒーを飲み干す社長。
涼し気な顔でなんということを。お父さんが死んでいるとでも言うの?
不穏な空気を感じたのか、おばあちゃんがゆっくりと私の傍に歩み寄った。
「父が死んでいれば、この借金は相続人である私が返さなきゃいけない。それはわかりますが、父が死んだという証拠がないじゃないですか」
怒りに震える声を押さえ、やっと反論する。けれど、帰ってきたのはせせら笑いだった。