独占欲高めな社長に捕獲されました
「まずハンガリーまでのチケットを手配しよう。と言っても日本から直行便は出ていないから、近隣の国からバスか何か使って入国することになるが……そうだ美羽、パスポートは持っているか?」
てきぱきとハンガリー行きの段取りをしてくれるのに、私は上の空だった。無論、昼間の秘書さんの言葉が耳の奥で反響して止まらないからだ。
「おい、聞いているのか」
至近距離で顔をのぞきこまれ、胸が苦しくなった。
「どうしてそこまでしてくれるんですか?」
苦しさから逃れるために、目を逸らす。
「そこまですれば、私が素直に実家の土地を差し出すと思うんですか?」
「なんだって?」
「あなたが必要以上に私に近づいたのは、全てあの土地のためだと──」
秘書さんが言っていた。そう言うのは躊躇われた。盗み聞きしていたことがばれてしまう。
ぎゅっと唇を噛むと、昴さんは盛大なため息を吐いた。
「聞いていたな」
「う……」
「会社に帰ってきたらゴミ箱に見覚えのあるバッグが捨ててあるからビックリしたよ。中身の弁当まで。どうしてあんなことをしたのかと気になって来てみれば。なるほど、納得した」