独占欲高めな社長に捕獲されました
昴さんがそっと私の頬に触れる。ぶっきらぼうな口調とは裏腹に、仕草は壊れ物を扱うように優しい。
「あれは、秘書の勘違いだよ。毎日手作り弁当を持っているから色々と聞かれて。面倒臭くなったから、お前と付き合っているとはっきり言った」
「へっ」
い、言っちゃったの? 私自身、“付き合っている”とちゃんと聞いたことなかったのに。そのせいで何度不安になったことか。
思わず昴さんの方を見てしまう。目が合うと、彼は真剣な表情をしていた。
「“どうして付き合うことになったのか”と聞かれたから、“最初はあの土地が目当てで近づいた”とだけ言った」
そうだった。昴さんは最初、完全な悪役だった。うちの実家に来たのは、土地目当ての何物でもない。
「そこから秘書の妄想が暴走したんだろうな。必死に説明するのも面倒だから放っておいていたが、お前が嫌な思いをしたなら謝る。すまない」
昴さんは、座っていた私をそっと抱き寄せる。肩越しにおじいちゃんの絵を見る目に、涙の膜ができた。