独占欲高めな社長に捕獲されました


 昴さんはひっきりなしに携帯で誰かと連絡を取り合っていた。

 私はほとんど使っていなかったパスポートを発掘し、少ない荷物をまとめた。

「留学経験があってよかった……」

 それでなければ、お金も友達も少ないので、海外に行こうなどと考えなかったろう。すなわち、パスポート申請に時間がかかったはずだ。

 昴さんが呼んだタクシーに飛び乗り、空港へ。成田につくと、スーツの男の人が昴さんを待っていた。

 白いものがまじった髪を、オールバックにして後ろになでつけている。すらりとした小奇麗なおじさんだ。まるで執事といった風情。

 彼が手にしていたスーツケースと、飛行機のチケットと思われる封筒を受け取り、昴さんがうなずく。

「ありがとう。助かるよ」

 お礼を言われた中年男性は、品のある笑顔を見せた。やっぱり、西明寺家の執事さんなんだろうか。

 興味はあったけど無駄話をする余裕はなく、出国手続きに急ぐ。

「さっきも言ったが、ハンガリーまでの直行便はないから、まずドバイを経由してウィーンに行く。そこから鉄道でハンガリーに入る」


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