独占欲高めな社長に捕獲されました
アンナさんに案内され、病院の受付で身分証を見せた。電話をもらったこと、ここに父親が入院することを説明する。受付の女性は受話器で誰かと話したあと、立ち上がって私たちの前に立った。
「病棟と連絡を取って、面会許可が下りたのよ。彼女が病室まで案内してくれるって」
アンナさんが説明してくれる。
「あの、父の病気はだいぶ悪いんでしょうか?」
通訳してもらうと、受付の女性は興味がないといったように肩をすくめた。
「彼女はただの受付だから、わからないって」
「ああ、そうですか……」
そりゃそうだ。日本だって、ただの受付事務が患者の状態を把握しているわけない。ちょっと考えればわかるはずなのに。やっぱり私、緊張しすぎているみたい。
いったいどんな状態の父親と対面させられるのか。たくさんの医療機器に繋がれて話もできない状態だったら、どうしよう。私、正気でいられるかな。
廊下を進んでいくうち、怖くなる。汗ばんだ手のひらを、昴さんがそっと握ってくれた。