独占欲高めな社長に捕獲されました
病棟に着くと、看護師さんたちの姿が見えた。ナースステーションで受付の女性は帰っていき、代わりに看護師さんがお父さんの病室の前まで送ってくれた。
「ここよ。ドクターは外来診察にキリがついたら来るから、先に入っていいって」
「どうもありがとう」
緊張と心配で口がカラカラ。何も言えない私の代わりに、昴さんがアンナさんにお礼を言った。
覚悟してドアに手をかけ、ゆっくりと開ける。部屋の中にはベッドがひとつ。個室らしい。ベッドに横たわる男性は、静かに眠っていた。まぶたは固く閉じられ、口はぽかんと開いていた。
「お父さんっ……!」
まさか、手遅れだった……?
まったく生気を感じないベッドの上のお父さん。私はベッドのすぐそばに駆け寄り、跪いた。
「お父さん、お父さん! ねえ、返事して……!」
ベッドからはみ出ているだらんと伸びた手を握る。涙が込み上げてきて、ぽろぽろと溢れた。
「……おい。冷静になれよ。息、してるぞ」
頭の上から浴びせられた冷水のような昴さんの声。顔を上げてよく見ると、確かにお父さんの胸が呼吸で上下している。