独占欲高めな社長に捕獲されました
「生きているのなら、それほどけっこうなことはありません。けれど、期限は一か月後。これは譲れません。もともとの返済期限を過ぎているのですから、こちらとしてもそこまでしか譲歩できない」
なんて嫌なやつ。譲歩とかいって、全然こっちに優しくない。自分が有利だってわかっているからこその言い方だ。
「ここを売れば、お父さんの借金はチャラになる。そうですね、ここの絵も正規の値段で全て買いましょう。荷物は少ない方が、新生活もスムーズに行く。悪くない話だと思いますが」
イケメンで、絵が好きそう。そんなことで一瞬でもドキッとした私が間違いだった!
おじいちゃんの絵は、本当に気に入ってくれた人に譲るべきだ。荷物呼ばわりするこいつに渡したら、速攻で捨てられるか、ネットオークションに出されちゃう気がする。
「一か月で雄一郎が見つかるかしらねえ……」
のんびりとした声に振り向くと、おばあちゃんが眉を下げて頬に手を当てていた。
たまに届く絵葉書には言葉通り絵しか描かれておらず、近況を知らせるものはどこにもない。あちらから連絡を取ろうとしない限り、居所は容易にはつかめなさそうだ。