独占欲高めな社長に捕獲されました

 昴さんに問われ、私はこくりとうなずく。

「私が選んだのは……」

 色々と悩みに悩んだわりに、最後は自分でも拍子抜けするくらいほどあっさりと決まった。

「横川雄一郎作、“団欒”です」



* * *

 ハンガリーまで迎えに行ったお父さんが大事に日本に持って帰ってきた荷物の中に、それはあった。

 病院でも病室の片隅に、まるでお父さんに寄り添うようにそこにあったキャンバス。布で包まれたそれを、お父さんは実家で見せてくれた。

 おじいちゃんのギャラリーのイーゼルにその絵は立てかけられた。観客は私とおばあちゃんだけ。

 おばあちゃんはお父さんに久しぶりに会えて相当喜んでいた。少し前のしぼんでいたおばあちゃんはどこへやら。元気はつらつで動き回り、自慢の料理を振舞ってくれた。

 満腹になって完璧にまったりしていた私たちの前で、ベールは剥がされた。それを目にした私とおばあちゃんは、思わず息を飲んだ。

 大きなキャンバスには、とある一家の団欒の風景が描かれていた。バースデーケーキを囲む、おじいちゃんとおばあちゃん、おじさん、そして小さな女の子。

『これ……』

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