独占欲高めな社長に捕獲されました
色々ありすぎて忘れてしまっていた。おばあちゃんが横から私の腕を叩く。
『いやよ美羽ちゃん、私よりさきにボケちゃ』
『ボケ……だれが認知症なの。忙しかったからうっかりしていただけよ』
私はもう一度、正面から絵を見直した。
離れていても、家族のことを忘れたことはない。お父さんのそんな想いがひしひしと伝わってきた。
『本当に、素敵な絵』
下手な褒め言葉だったけど、お父さんは嬉しそうに微笑んだ。
そこそこ高値がつく画家だというのに、娘の一言で頬が緩みっぱなしになっている。
もう……これだから、うちのお父さんって憎めないんだよね。
* * *
自分の部屋に飾っておきたい気持ちもあるけど、ここに飾ってもらった方がたくさんの人に見てもらえる。そしてその何割かの人は、自分の家族のことを思い出して切なくなったり、優しい気持ちになってもらえるだろう。
正直、私はお父さんの“団欒”よりこの場に相応しい絵を知らない。
「まだ完成したばかりの作品で、どこにも出回っていません。うちの実家にあるので、すぐに持ってこられます。あ、写真を撮ってあるので確認されますか?」