独占欲高めな社長に捕獲されました
携帯をバッグから取りだそうとすると、その手を昴さんにそっと包みこまれた。

「大丈夫。その必要はない」

「えっと、でも」

 どういう絵かわからなければ、審査のしようもないはず。

 きょとんと見上げる私をおかしそうに見つめ、昴さんは形のいい唇を動かす。

「その絵は、これだろう?」

 昴さんが壁を覆っていた布に手をかける。ぐいっと引っ張られて波打つ布の向こうに、それは現れた。

「あっ! えっ、どうして?」

 壁には、額装された“団欒”がすでに飾られていた。間違いなく、実家で見たのと同じ絵だ。

「俺はお前がこの絵を選ぶことを、予想していたから」

「なんですかそれ」

 それじゃまるで、昴さんは私より先にこの絵を見たことがあるみたい……って、まさかハンガリーで見たんじゃ。

 あのとき、私たち三人はそれぞれ別の部屋に泊まった。“団欒”はもちろんお父さんの部屋にあった。

「お父さんに見せてもらっていたんですね?」

「ああ。病院でキャンバスを見つけたときから目を付けていたんだ。今をときめく横川雄一郎の新作だ。誰よりも早く見たいに決まっている」

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