独占欲高めな社長に捕獲されました
こういう気取らないところ、好感持てるなあ。社長だったら「このホテルのグレードからすれば安いものだ。高いと言うやつは感覚が貧しい。残念極まりない」と言ってせせら笑うのだろう。
社長が悪魔なら、先輩は天使だわ。慈しみ深い心で、私を救ってくれる。
松倉先輩の頭の上に光輪が、背後にテンペラで描いたような羽根が見えた気がした。
私は立ち上がり、先輩に詰め寄る。
「でも、どういうところか見てみたいんです。今後のために」
「へえ」
「先輩がどういうお部屋を作ったのか、ぜひ勉強させてください。今度お仕事で行くことがあったら、私も連れていってほしいんです。お願いします!」
他の社員はランチに出ていて、オフィスの中には私と先輩のふたりきり。チャンスは今しかない。
私は額を床にこすりつけるくらいの勢いで、深く頭を下げた。
「……それって、僕とそこに泊まりたいってこと?」
「え?」
意外な返事が聞こえて、思わず顔を上げた。松倉先輩は照れたように笑っていた。
「それならそうと、素直に言えばいいのに」
「あのー、先輩?」
私がいつ、先輩とお泊りしたいって言った?
「そう言って誘ってくる子、今までに何人もいたよ」