独占欲高めな社長に捕獲されました

そういうことか! 仕事の勉強と言いながらホテルに誘う女子社員が過去にいたってことだ。しかも何人も。

先輩モテるもんなあ……と、感心している場合じゃない。

「そ、そういう意味ではないんです。本当に、内装の勉強に……」

「照れなくてもいいよ」

「照れていません!」

お願いだから、話を聞いてください。

心の底から否定すると、上司がランチから戻ってきた。

「おお、お前ら早いな。感心感心」

いつの間にか午後の仕事開始の時間。オフィスにひとり、またひとりと社員が戻ってきた。

くそう。先輩のとんちんかんな切り返しのせいで、話が進まなかった。せっかく例のホテルの仕事をしている人物を見つけたというのに。

松倉先輩は意味ありげな視線だけを投げてよこし、自分の席に戻っていく。

私は何の反応も返さず、パソコンの陰に隠れて舌打ちをした。

感じがいいと思っていたけど、とんだナルシストの遊び人だったのね。

あーあ、優しくてチャラくない彼氏がほしいな。私のことを一番に考えてくれる彼氏が。って、借金があっちゃ恋愛も結婚も無理だよなあ……まともな人なら、ドン引きするに決まっている。


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