独占欲高めな社長に捕獲されました
そんなことを考える自分に気づいてうんざりした。
恋愛のことを考えている暇なんてないのに。追い込まれて疲れているみたいだ。
仕事はしっかりしなくては、と深呼吸してパソコンに向き直る。けれど、ほとんど集中できずに終業時刻を迎えてしまった。
──もうダメだ。早く帰ろう。
はかどらない仕事に見切りをつけ、席を立つ。
家のパソコンで、もう少し詳しく調べてみよう。同じタイプのホテルのロビーなら、宿泊客のブログなんかに写真が載っているかも。それらを頼りに、宿題の絵の手がかりを探すんだ。
頭の中では、新しいホテルと、父の借金と、おばあちゃんの愛するギャラリーのことがぐるぐる駆けまわっていた。
「ねえ、横川さん」
人が少なくなってきたオフィスを出た瞬間、背後から自分を呼ぶ声がした。
考え事をしていたせいで、振り返るまでにいつもより時間がかかった。
振り向いた視線の先にいたのは、松倉先輩だった。人あたりの良さそうな笑顔でこちらを見ている。
「さっきはからかってごめん。例のホテルの内装を見たいんだよね、勉強のために」
相手の目的がわからず、首を傾げる。廊下を通る人の視線を気にするように、彼はこちらに近づいて小声で囁くように話す。