独占欲高めな社長に捕獲されました
「実は今、内覧会をやっているんだよ」
「えっ、内覧会!」
どうしてそれを早く言ってくれなかったの。
小奇麗な先輩の顔をじっと見返す。
「宿泊代金はかかるけどね。実際の宿泊施設を使ってみて、気に入ったら会員になってくださいっていう狙いだ」
「なるほど」
同じ系列のホテルを使ったことがある人ならともかく、全然中身がわからないホテルに大金を出して会員になる人は少ないだろう。
これはまたとないチャンスだ。希望が湧いてきた私に、松倉先輩が言う。
「そう。一緒に行く? 週末に一部屋予約しているんだ。っていうか、内装担当者として、実際に泊まってみろということで、会社から無料で予約票をもらったんだけど」
「一緒に……」
先輩が胸ポケットから免許証ほどの大きさのカードを取り出して見せた。ブラウンの紙に白字で、宿泊日時などが印字されている。
「もう予約がいっぱいらしくてね。予約票がない人は、門前払いを食うらしい」
聞いてもないことを親切に教えてくれる松倉先輩。暗に「自分と一緒に行かないと中に入れないぞ」と言っているのだろう。
「そうなんですね」
身の危険をひしひしと感じる……。