独占欲高めな社長に捕獲されました
さっきからの流れを考えると、松倉先輩は、自分が私に好かれていると思ったらしい。
この展開に流されるまま彼についていったら、セクハラまがいのことをされる確率は高そうだ。自意識過剰かもしれないけど。
「どうする?」
ああ、さっきは天使の羽根が見えたのに。小首を傾げる先輩が悪魔に見えてきた。人を誘惑する、悪いやつ。
ここはひとつ、先輩を信じてついていこうか。セクハラをされると決まったわけじゃない。
たとえされたとしても……やっぱりそれは怖いけど、我慢する。だって、例のホテルを実際に目にするには、それしかなさそうなんだもの。
おばあちゃんの家とおじいちゃんのギャラリーを守るためなら。いいじゃない、減るものでもなし。
覚悟を決め、返事をしようと息を吸ったときだった。
「おい、横川美羽」
低い声が先輩の背後から聞こえた。ひょっこりと顔を出してそちらをのぞき、息が止まりそうになった。
なんと、今まで社内で見たことがなかった西明寺社長が、こちらに向かって歩いてきていた。
念のため後ろを振り返るけど、廊下には誰もいない。こちらに話しかけてきたことに間違いはない。