独占欲高めな社長に捕獲されました
「あ、あのう……この車はどちらへ向かっているのでしょうか……」
西明寺社長の後ろをついていくと、会社の横の立体駐車場、しかもお偉いさんしか停められない階に連れていかれ、車に乗るよう指示された。
社長の車は流れるようなデザインの外国車だった。大きな黒い車体、豪華な内装。
革張りのシートにもたれるのも勇気がいる。会社から離れて十分ほど経ったけれど、車が停まる気配はない。
後ろに流れていく景色がだんだんと知らないものになっていき、不安を覚えた。
やっぱり借金返済のために人身売買をさせようと思っているんじゃあ。それ以外に社長が私をわざわざ車に乗せる理由が思い浮かばない。
こめかみから冷汗を流す私に、社長は前を向いたまま言った。
「例の絵を飾るロビーを、見せてやる」
え……なんて言ったの、今。
社長の言葉が信じられなくて、その端正な横顔を、見開いた目でまじまじと見てしまう。
「さすがに、実際の現場を見ずに絵を選ぶのは不可能だろう」
「それはそうですが……」
私がその場に相応しい絵を探して来られなければ、あのギャラリーは借金のカタに取られて取りつぶし、跡地はリゾートホテルの一部になる。社長はそれを望んでいるはず。
なのに私に現場を見せてくれるというのは、なぜだろう。