独占欲高めな社長に捕獲されました
「この壁だ」
周りから目隠しされたような、窓のない閉ざされた空間。
広々としているので圧迫感はない。だけど今のままじゃ、少し寂しいような気がする。
「会員どうしで交流もできる、憩いの場だ。一流の人間が集まるこの場に相応しい絵を探している」
ふと後ろを振り返ると、たしかに、一見してお金持ちそうな人ばかりが座っている。
きちっとしたシャツと細身のパンツを身に付けたご老人の傍らにはオシャレな帽子が。その横に座る奥さんの首に光るのは、おそらく本物の真珠。しっかりしていそうな生地のワンピースに、楽な運動靴ではなく汚れひとつない清潔なパンプスを身に付けている。
ふと自分とおばあちゃんを思い出した。ボーダーTシャツにチノパンな私。楽なズボンとゆったりニット、手作りアクセサリーをつけたおばあちゃん。不潔ではないけど、かなり庶民的だ。
おじいちゃんなんて、毎日作務衣で絵を描いていたものなあ……。
社長やここのお客様との身分の違いをしみじみと感じる。
「一流だろうが三流だろうが、どんな人が見ても“良い”と思える絵を飾りたいですね」
せっかく素敵な建物、素敵なロビー、素敵な談話スペースだもの。
アニメルームの仕事を任されたときより、はるかにわくわくしている自分がいた。