独占欲高めな社長に捕獲されました
窓の外では、海に夕日が沈んでいく。ランボーの詩を思い出す。太陽と番った海に照らされるオレンジ色のビーチ。
出張でプチトリップ気分が味わえるのが、今の仕事の唯一の救いだ。
バスから降り、実家へ向かう新幹線に乗る。課長は他の社員が手掛けた男児ルームの手直しをするためにホテルに残るそうだ。
ちなみに男児ルームには、人気の特撮ヒーローが……って、どうでもいいや。
頭の中からカオスな幼児ルームの光景を追い出し、座席のシートを少し倒し、瞼を閉じた。
翌朝、目が覚めるとやけに頭がすっきりしていた。
実家の空気のせいだろう。東京に借りている部屋では、平日のストレスのせいか、いくら早くベッドに入ってもなかなか寝付けず、起きた時はなんとなくだるい。
幼いころからの自分の部屋で着替えをする。小さなチェストには、ここに来たときのための服が何着か入っていた。
毎週土日を私は静岡県のこの実家で過ごす。シンプルな長袖Tシャツとチノパンを履いて階段を降りた。
一階から、コーヒーのいい香りが漂ってくる。階段を降りきると、そこには普通の住宅にはない広い空間が広がっていた。