独占欲高めな社長に捕獲されました
食事のあと、社長はそのままホテルに泊まると言い、私をタクシーで自宅まで送るように手配してくれた。
狭いワンルームに帰ってきて、なんだかがっくりと全身から力が抜けてしまったことは記憶に新しい。
田舎の実家での素朴でつつましい生活が好きだったし、自分に合っていると思っていた。東京の騒がしさや忙しさが苦手だった。
だけど、あんな世界を見せられたら……。田舎者の自分がとってもちっぽけな、つまらない存在のように思えてくる。どうせなら、あくせく働きながら儲からない画廊の手伝いをして生きるより、旦那の稼ぎでああいうホテルの会員になれる人生の方がいいよな、なんて思ってしまう。あれはまさに目の毒だったな。
私には私に似合う人生がある。あれは一夜の夢なのだから、早く忘れなくちゃ。
気を取り直し、分厚い画集のページをめくる。学生時代の名残で、アパートには様々な画家の画集が置いてあった。
どんな絵があのホテルに相応しいか、どれだけ既存の絵を見ても、正解に辿り着けない。
西明寺社長自身も自ら作品を収集してしまうくらいの絵画好きだということがわかり、それが純粋な思考を邪魔しているようだ。