独占欲高めな社長に捕獲されました
私は美しき恋人たちから無理やり視線を剥がそうとした。その瞬間、ふたりがある絵の前で立ち止まった。周りの迷惑にならないよう、顔を寄せ合って小声で話している。その絵の感想を言いあっているようだ。
ちょっと邪魔だなぁ……。
おっといけない。また本音が口から出てしまうところだった。
恋人たちの前の絵は一旦諦め、彼らの後ろを通って先に進むことにした。すると、不意に動きだしたジャケットの男とぶつかりそうになってしまった。
「すみません」
「いえ……」
ぶつかりはしなかったので、軽く会釈してやり過ごそうとした。けど、相手の顔をちらっと見上げた私はそのまま動けなくなってしまった。
「あ。横川美羽」
そう言ったジャケット男は、西明寺社長だった。
スーツを着ていない彼は、いつもよりいくぶんか柔らかい雰囲気を纏っている。私が知っている悪役社長じゃない。だからわからなかったんだ。
「あのう……?」
彼の後ろから、ワンピースの女性が顔をのぞかせた。長い髪はつやつやで、枝毛ひとつなさそう。白くて細くておっぱいが大きい、文句のつけようがないくらい美人な彼女を振り返り、社長は言った。