独占欲高めな社長に捕獲されました
「この前話しただろ。横川円次郎先生の孫だよ。うちの社員」
「まあ、この方が」
二人の会話になんとも言えない居心地の悪さを感じた。いつどこで、私の話をしたのかな。どうせ、ろくな話じゃないだろう。
この女の人、誰かな。お姉さんや妹さん? それにしては、ちっとも似ていない。やっぱり彼女と見るのが普通か。
「どうだ、作業の方は進んでいるか」
例の絵のことを言っているんだろう。見つかっていたらこんなところにいないわよ。私は小さく首を横に振った。
なによ、こんなに綺麗な彼女がいるのに、他の女(つまり私だ)を会員制ホテルに連れ込んでいいわけ? 私が彼女だったら嫌だな。たとえ、食事だけでも。
「可愛い方」
ワンピース美女が、私を見て微笑んだ。その笑顔に、小さじ一杯くらいの悪意を感じ取れたのは、きっと同じ女である私だけだろう。完全に上から目線。そして少しバカにした目つきだ。
「そうだ横川、月曜出勤したら……」
突然仕事モードで話してくる社長に、椅子に座っていた学芸員さんが立ち上がって近づいてきた。