独占欲高めな社長に捕獲されました
「すみません。お静かに」
メガネをかけ、髪を後ろで一本縛りにした若い女性にたしなめられ、社長は首の後ろをかいた。
「これは失礼。気をつけます」
はにかんだように笑う社長のオーラに押され、学芸員さんはすぐに自分の位置に戻っていった。
自分の笑顔に破壊力があるということをわかっていてやっているに違いない。やっぱり嫌いだ、こいつ。
「お先へどうぞ」
私はじっくりと絵を見たい。この人たちを気にしながら前に進むのはバカバカしい。手で先に行けとジェスチャーすると、社長は何も答えなかった。
「邪魔しちゃ悪いわ。行きましょう」
代わりに答えたワンピース美女に背中を押され、やっと社長も退散していった。順路にある陶器のコーナーはあまり興味がないのか、さらっと流し見て、次のフロアに移っていった。その間、私の方は一度も振り返らなかった。
ほほーう。人を借金地獄に突き落としておいて、自分はハイスペック彼女とほのぼの美術館デートですか。いい気なもんね!