独占欲高めな社長に捕獲されました
土足用のスニーカーを履いて降り立つと、壁やイーゼルにかけられた絵画たちに囲まれる。柔らかな色彩のそれらをぐるりと見回すと、奥にあるカウンターから声が聞こえた。
「おはよう美羽(みわ)。よく眠れた?」
カウンターに近づくと、その上にぽんとフレンチトーストが載ったお皿が置かれた。相変わらず美味しそう。
フレンチトーストの香りを吸い込みながら、椅子にかける。
「うん、やっぱり実家は最高。あと、おばあちゃんの料理を食べたからかな」
フォークを持つと、カウンターの中の年配の女性……私の祖母は、にこりと丸い顔で笑う。
歳の割にはしわが少なく、髪は真っ白で、我が祖母ながら可愛いおばあちゃんだ。
おばあちゃんは一人で、この『横川円次郎ギャラリー』を経営している。
三角屋根にレンガ風のタイル。イギリスの伝統的住宅風に作ったこの家は、画家だった祖父、横川円次郎が建てたもの。
二年前に彼が亡くなったのを機に改装し、ギャラリーと小さなカフェスペースをオープンした。カフェはギャラリーとガラス戸一枚を隔てて、奥のカウンター席とテーブルセットが二つ、テラス席がひとつの小さなものだ。